歌遊泳:民子さんオホーツクを唄う

前回、森繁「勲章文化」などと偉そうなことを書きましたが、『知床旅情』は広く好まれる歌で、私も好きです。で、歌い手を探りこの歌を遊泳しました。
倍賞千恵子さんには驚かされました。
 
<倍賞民子さん>
倍賞さん。柴又:とら屋の、寅さんの妹:さくら とばかり思っていましたが、
この歌唱は圧倒的です。何か開き直る度胸のある人ですね。
高校時代、地味で目立たないのに意外性を発揮する
(例えば走らせればムチャ速い、寡黙で歌うところなど見たことも
無いのに歌うと抜群、ある時行きがかりで突然ダンスを披露する、
ある日大化けの私服姿を見かける)、各クラスにそんな女の子居りましたね。
あの驚きを思い出します。実に素晴らしい。
そう思うと、山田洋次監督『家族』の(倍賞・笠智衆・井川比佐志)の
民子=倍賞千恵子を思い出しました。
「民子三部作」と言われる山田三作品があります。
『家族』(70年)『故郷』(72年)『遥かなる山の呼び声』(80年)で、 
倍賞さん演ずるヒロインは全て「民子」さんなのですが、
敗戦から四半世紀経た70年(前後)を、山田洋次は
ある視点に立ってしっかり見ていたのかなと思います。
全てが右肩上がりの戦後社会が「ピーク」に来ており、
「ピーク」であればこそ、さて降下が始まるぞ、
「こんにちは、こんにちは♪世界の国から~♪・・・」と浮かれ騒ぐ社会の、
そこここに見える高度経済成長の歪み陰り、
砂上楼閣の崩壊が始まるぞ、いや始まっている・・・。
『家族』の画面は経済発展の象徴=瀬戸内コンビナート、万国博の喧騒、
大東京の緊急医療の貧弱など、70年曲がり角日本を見せつける。
北海道へ向かう『家族』と民子は、途中東京でわが子を、
到着地で夫の父(笠)を失う。 倍賞さんの歌唱姿を聴いて見た時
その民子が、悲しみを越えて、力強く唄っているような気がした。
再録http://www.youtube.com/watch?v=AcQNz2Z_f2E&feature=related(再度消去されてもどこかにアップされると思います)
(この倍賞さんホントに綺麗。よく見ると黒木メイサに似てます)
 
「民子」なる命名は、山田洋次が希う「民」
(私は、民衆・大衆という語は嫌いですが「民」ならわかり、たい)
のイメージだろう。70年代女性への希いですか?私同様、時代に
立ち向かうべき「男」を描けなかったか・・・・・?。
男たる私は当時、「タコ社長+寅さん」で生き延びていたのだが・・・。
さて、「寅さん」シリーズのマドンナ(「寅次郎忘れな草」のリリーさんが最高)
を繋げてゆくと、山田洋次の女性観が浮かび上がると思うのですが、
さらにそこへ「さくら」と「民子」で決まりですか・・・。
倍賞、家族
ともあれ「日本の曲がり角(70年前後)」から、すでに四半世紀以上です。
戦後、戦後後、少子高齢化社会・ニート・派遣切り・金融恐慌・医療荒廃・・・の21世紀を見通していた。
山田映画はええですね。
次回作は吉永小百合さん・蒼井優・鶴瓶らで『おとうと』です。                      
    
                            
 
 
                                                                                                                    【知床遊泳】
森昌子
夏川りみ:幸田浩子
石川さゆり
加藤登紀子
http://www.youtube.com/watch?v=T40Tx2WS6Ag&feature=related                                                                                        森繁久弥
倍賞千恵子
 
 

 

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