歌遊泳 中島みゆき「ホーム」にて

26日(土)友人たちと呑んで深夜帰宅すると、こたつテーブルに「NHK SONGS 中島みゆき、録画しといたで。見いや!」とメモ。
じっくり拝視聴。

【ホームにて】
主人公は、いまで言えば、それこそ西原理恵子の漫画に登場するようなアラサーの女性ではないだろうか? 保育士(か美容師か看護師)を目指して短大に行ったのだが、父入院もあり中退した。事務員として中堅商社に勤めるも、経理能力などなく、元々の職業的希いもあり仕事に馴染めない。着飾って色恋の話に明け暮れ<寿>(?)退社で辞めていく同僚、いささか不器用で美人でもない「わたし」。女が職場に進出したとは言え、30年以上前、70年代末の中堅商社はなお「お飾り女性社員」「職場の華」「男性社員の妻予備軍」をこそ求めていたのだ。それが70年代末の大都会企業社会の「風土」だ。
<「わたし」の独白>
けれど、「わたし」に、制度とも言えるその風土を覆す「技能」も「智恵」もない。女の「キャリア」への願望は、その手前で70年代末の中堅商社のお茶くみ場で踏みつけられていた。
70年代末に(今はもっとそうだけど)、実家の援助なく女ひとり大都会:札幌で暮す、その困難が解りますか?
会社を辞めたのは、確かにアパートと自宅との往復しか出来ない経済的・人間関係的「貧困」も理由だし、永く病床に在った父が亡くなった家の事情も、いいかげんな男に多額を貸して返って来なかった失敗も大きなきっかけです。
けれど今の、昼のアルバイトと夜の接客業は自ら選んだ道です。男の裏表(いや裏ばかり)も人並みに知りはしました。そりゃ、OL時代より収入はうんと増えたし、大学へ通う弟に職業を隠して支援もしてやれる。
だけど、あの最終に乗らないと、このネオンライト輝く虚飾の街が、「わたし」の出てゆけない棲処となってしまうヨ。(21世紀。今、「単身」「派遣女性社員」の多くがこの界隈に生きている)。
来年必ずあの最終の汽車に乗って行き、不足単位を取って保育士になるんです。今度の春から中座していた大学、再開するんです。去年も一昨年も出来なくて、「ドアは閉まり」「手のひらに」は「空色のキップ」だけが残って溜まるけれど、それはこの夜の街のネオンライトでは燃やせやしないのよ。残ったキップを燃やせない間は、汽車にも乗れやしないのよ。
ハッキリして来たヨ。「ふるさと」は、後ろではなく前方向に在る。時間的には過去ではない。距離的には遠方ではない。

【マイみゆきベスト6】
彼女の人生、夜風の中から、ホームにて、世情、ファイト、あぶな坂、

中島みゆきは何者?
「とおいふるさとは」「落ちぶれた男の名を」「呼んでなどいないのが」「ここからは見える」(あぶな坂)
「ここ」は「どこ?」
若くしてこの歌詞をモノしたみゆきさんに脱帽!

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