「アジール空堀」 童謡・唱歌に見る児童生徒に刷り込んだ国家意思
【蛍の光】(スコットランド民謡。1881年・明治14年、尋常小学校唱歌)
1.
蛍の光、窓の雪、
書読む月日、重ねつゝ、
何時しか年も、すぎの戸を、
開けてぞ今朝は、別れ行く。
2.
止まるも行くも、限りとて、
互に思ふ、千万の、
心の端を、一言に、
幸くと許り、歌ふなり。
3.
筑紫の極み、陸の奥、
海山遠く、隔つとも、
その真心は、隔て無く、
一つに尽くせ、国の為。
4.
千島の奥も、沖繩も、
八洲の内の、護りなり、
至らん国に、勲しく、
努めよ我が兄、恙無く。
【われは海の子】(1910年・明治43年尋常小学校唱歌」)
一、
我は海の子白浪の
さわぐいそべの松原に
煙たなびくとまやこそ
我がなつかしき住家なれ。
二.
生まれてしほに浴して
浪を子守の歌と聞き
千里寄せくる海の氣を
吸ひてわらべとなりにけり。
三、
高く鼻つくいその香に
不斷の花のかをりあり。
なぎさの松に吹く風を
いみじき樂と我は聞く。
四、
丈餘のろかい操りて
行手定めぬ浪まくら
百尋千尋海の底
遊びなれたる庭廣し。
五、
幾年こゝにきたへたる
鐵より堅きかひなあり。
吹く鹽風に黑みたる
はだは赤銅さながらに。
六、
浪にたゞよう氷山も
来らば来れ恐れんや。
海まき上ぐるたつまきも
起らば起れ驚かじ。
七、
いで大船を乘出して
我は拾はん海の富。
いで軍艦に乘組みて
我は護らん海の國。
【冬の夜】(1912年・明治45年、尋常小学校唱歌)
一、
燈火(ともしび)近く衣(きぬ)縫(ぬ)う母は
春の遊びの、楽しさ語る。
居並(いなら)ぶ子どもは指を折りつつ
日数(ひかず)かぞえて喜び勇む。
囲炉裏火(いろりび)はとろとろ
外は吹雪(ふぶき)。
二、
囲炉裏のはたで縄(なわ)なう父は
過ぎしいくさの手柄(てがら)を語る。
居並ぶ子どもはねむさ忘れて
耳を傾(かたむ)けこぶしを握(にぎ)る。
囲炉裏火はとろとろ
外は吹雪
【里の秋】(1941年・昭和16年12月 童謡雑誌掲。戦後1945年川田正子歌唱ラジオ放送で全国放送))
一、
静かな静かな 里の秋
お背戸に木の実の 落ちる夜は
ああ 母さんとただ二人
栗の実 煮てます いろりばた
二、
明るい明るい 星の空
鳴き鳴き夜鴨(よがも)の 渡る夜は
ああ 父さんのあの笑顔
栗の実 食べては 思い出す
三、
きれいな きれいな 椰子の島
しっかり 護って くださいと
ああ 父さんの ご武運を
今夜も ひとりで 祈ります
四、
大きく大きく なったなら
兵隊さんだよ うれしいな
ねえ 母さんよ 僕だって
必ず お国を 譲ります
*川田正子が唄った時点では、三番は下記に変更され、四番は削除された。
さよなら さよなら 椰子の島
お船に ゆられて 帰られる
ああ とうさんよ ご無事でと
今夜も かあさんと 祈ります