通信録: 12月11日 鵜飼哲オリンピックを語る

この夏、8月21日のNHKの番組「おはよう日本」。
オリンピックを扱ったコーナーで、「五輪開催5つのメリット」としてナント! 「国威発揚」を挙げていた。
「リオ五輪 成果と課題」と題し、刈谷富士雄解説委員が登場。刈谷解説委員は、まず、過去最多の41個のメダルを獲得したリオ五輪の日本勢の活躍について「目標を達成した」と評価。そして、2020年の東京五輪に向け、競技人口の底上げやスポーツ環境を整える必要性を訴えた。驚いたのは次の場面だ。
「何のためにオリンピックを開くのか。その国、都市にとって何のメリットがあるのか」と投げ掛けると、五輪のメリットとして真っ先に「国威発揚」を示したのだ。
まず「オリンピック憲章」だ。
JOC(日本オリンピック委員会)ホームページの「オリンピズムってなんだろう」と題したコーナーで、同憲章は〈オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない〉とある。
 
ワシはこのオリンピックの「建て前」をいかがわしいと思いながら、永く一応「建て前」としてだけはそれは生きているのかなと思って来た。
 
********************************************************************************************
 
【12月11日、鵜飼哲さん講演会】
 
鵜飼哲さん講演は、近代オリンピックはその起源からして国威発揚・ナショナリズム・戦争と骨がらみであったことを、近代オリンピックの父とされるクーベルタン男爵の言葉、男爵の国=フランスの「普仏戦争敗北」「パリ・コミューン後の国家基軸の空白」世情から読み解く。
(1894年、パリの万国博覧会に際して開かれたスポーツ競技者連合の会議で、 クーベルタンは、オリンピック復興計画を議題に挙げ、満場一致で可決。第1回大会は、1896年、古代オリンピックの故郷オリンピアのあるギリシャで開催することも採択された。)
%e9%b5%9c%e9%a3%bc%e5%93%b2
クーベルタンは言う、
「近代オリンピックの本質的特徴は、それが宗教だということである。彫刻家が彫像を彫琢するように自分の身体を鍛錬によって彫琢することで、古代のアスリートたちは神々を崇めていたのである。近代のアスリートたちは、同じようにすることで、彼の祖国・彼の人種・彼の国旗を称揚するのである。
近代オリンピックの第二の特徴は貴族制であり、選良だと言うことだ。だが、もちろん、まったく起源は平等な貴族制である。なぜならそれは個人の身体的な優越性と、ある程度までは意志的な訓練によって向上させうる筋肉の可能性によってのみ規定される貴族制だからだ」
(1935年ベルリンにおけるラジオ放送)
ナチスの思想に近く、ヒトラーの演説かと見まがうほどだ。
講演はオリンピックが元々、かかる思想性の下に生まれ育ち運営されたという出自を明らかにしてゆく。ワシらが聞き慣れている「オリンピック精神」「オリンピック憲章」「メダルではない参加することに意義がある」は吹き飛び、前述のNHK某解説委員が言う通り「国威発揚」「ナショナリズム」に加え「戦争体制準備」というドス黒い実像が浮かび上るのだった。

Leave a Reply

Search