Archive for 1月, 2015
たそがれ映画談義: 祝!安藤サクラさん キネマ旬報主演女優賞
正月5日素晴らしい映画に出逢った。『百円の恋』だ。実は熊沢誠先生のFBを拝読しての行動だ。(熊沢先生と趙博氏の推薦はいつもハズレがない。)
日本映画史に残るヒロインの誕生だと思う。2014年度の主演賞を総ナメしそうな予感がする。(1/6 FBより)
【あらすじ】(公式サイトより)
32歳の一子(安藤サクラ)は実家にひきこもり、自堕落な日々を送っていた。
ある日離婚し、子連れで実家に帰ってきた妹の二三子と同居をはじめるが折り合いが悪くなり、しょうがなく家を出て一人暮らしを始める。夜な夜な買い食いしていた百円ショップで深夜労働にありつくが、そこは底辺の人間たちの巣窟だった。
心に問題を抱えた店員たちとの生活を送る一子は、帰り道にあるボクシングジムで、一人でストイックに練習するボクサー・狩野(新井浩文)を覗き見することが唯一の楽しみとなっていた。
ある夜、そのボクサー・狩野が百円ショップに客としてやってくる。狩野がバナナを忘れていったことをきっかけに2人は距離を縮めていく。なんとなく一緒に住み始め、体を重ねるうちに、一子の中で何かが変わり始める―――。
「ぼくの日本映画鑑賞史」上のヒロインベスト10は、
『ここに泉あり』の岸恵子。(1955年、監督:今井正、脚本:水木洋子、共演:小林圭樹・岡田英次)
『洲崎パラダイス赤信号』の新珠三千代。(1956年、監督:川島雄三、共演:三橋達也・轟夕紀子)
『秋津温泉』の岡田茉莉子。(1962年、監督・脚本:吉田喜重、共演:長門裕之)
『非行少女』の和泉雅子。(1963年、監督:浦山桐郎、脚本:石堂淑朗・浦山桐郎、共演:浜田光夫)
『飢餓海峡』の左幸子。(1965年、監督:内田吐夢、脚本:鈴木尚之、共演:三國連太郎・伴淳三郎・高倉健)
『清作の妻』の若尾文子。(1965年、監督:増村保造、脚本:新藤兼人、共演:田村高廣・殿山泰司)
『私が棄てた女』の小林トシエ。(1969年、監督:浦山桐郎、脚本:山内久、共演:河原崎長一郎・浅丘ルリ子)
『寅次郎 忘れな草』の浅丘ルリ子。(1973年、監督・脚本:山田洋次、共演:渥美清・倍賞千恵子)
『赤目四十八瀧心中未遂』の寺島しのぶ。(2004年、監督:荒戸源次郎、共演:大西滝次郎・大楠道代・内田裕也)
『悪人』の深津絵里。(2010年、監督:李相日、原作:吉田修一、共演:妻夫木聡・満島ひかり・岡田将生)
なのだが、ベスト11にして、この映画の安藤サクラさんを加えたい。
『百円の恋』の安藤サクラ。(2014年、監督:武正晴、共演:新井浩文)
底辺ダメ女の「起ち上がり」は、引きこもり・女の生きにくさ・格差学歴社会などを、抑制されたセリフの中に描き、
愛と怒りに充ち、ワシらへのたまらん応援歌にもなっている。
シナリオの段階でこの作品を見出した松田美由紀さん(故松田優作夫人)らの眼力に脱帽です。
一子(安藤サクラ)の痛覚と恋情。それこそが人が連帯と自立へと向かう契機だ。