「ブラック・ジョークは撤回しました。」「あっそう。」  とは行かない!

報道によれば、『麻生太郎副総理兼財務相は1日、憲法改正に関連しドイツのナチス政権を引き合いに「あの手口、学んだらどうかね」と講演で述べたことについて「誤解を招く結果となった」として撤回した。』とある。(毎日新聞)

麻生副総理が1日に発表した発言撤回コメント(全文)は次の通り。

『7月29日の国家基本問題研究所月例研究会における私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。                                                                                                                                                                                   私は、憲法改正については、落ち着いて議論することが極めて重要であると考えている。この点を強調する趣旨で、同研究会においては喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪(あ)しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげたところである。私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい。』                                                                                                                                  「誤解」?。これが「撤回」か?

発言全体を見れば、「ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。」 「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。」 この発言のどこが「極めて否定的にとらえている」だ?                                                                                                                                                                                               誤解は、ドイツ現代史への麻生理解に在る。20df96fb2eb4bc583ce25cd8f0f3a463[1]

大阪で某新興政党が熱狂的に支持される以上に、ナチスが市民に支持されたのは事実だし、議会や投票のルールに一応基づいてナチス政権が誕生したことは事実だ。だが、同時に、それに至る第一次大戦のドイツ敗北、元軍人らの回収先=義勇軍=フライコールによるローザ・ルクセンブルクら暗殺、膨大な戦争賠償金に疲弊するドイツ国家・国民・企業、社会民主党政権下の超インフレ、困窮し報われない層のファシズムへの傾斜(期待)、ワイマール共和国の解体…そうした経緯の中でナチスが勢力を得、そして、ナチスの政権獲得に至る歴史は暴力と血に塗れているのも事実だ(ナチ党内部も)。                                                                                                                                                                                                                                   政権獲得後も、1933年「国会焼き討ち事件」、反対派議員逮捕下で採択された「全権委任法」(ナチ政府の制定した法律は憲法に背反しても有効とする法律案)による「憲法停止」(麻生が言う「ナチス憲法」は存在しないし、また「ある日気が付いたら」「変わっていた」などというように平穏無音に行なわれたのではない)から国家と党の一体化は進み、第二次世界大戦~ホロコーストへと向かう。

確かに麻生が「ドイツ国民がヒトラーを選んだんですよ」と言う通りだが、それは日本国民が《軍部独裁》を選んだのと違いはしない。違うのは、この自国現代史を痛苦をもって俯瞰する文化や広範な国民理解が、在るか無いか、だ。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          第一次大戦末期に終戦を唱えた左派勢力は「国家の敵」だとし、戦時戦後に疲弊し困窮する国民を尻目に蓄財しているとされたユダヤ人こそ「諸国民の敵」だとして攻撃対象を捏造する手口、1923年のナチ党によるミュンヘン一揆(バイエルン州政府へのクーデター)以降の地方政府から攻め上るスタイルや、「全権委任」を得たとうそぶく言動。                                                                                                                 現在日本の某新興政党や政権党議員の、「弱者が辛うじて得た権利を特権と呼ぶ悪宣伝」「公務員叩き」「地方掌握からの攻め上り」「白紙委任の民意を得たという詭弁」は、確かにナチスと酷似していて多くの論者が「ハシズム」と呼ぶのも故なくはない。                                                                                                                                               この度の麻生迷言に対し、某新興政党の代表は「行き過ぎたブラック・ジョーク」「ナチスドイツを正当化した発言でないことは国語力があれば分かる」と言っている。あんた、どんな国語力だ! そしてどんな歴史観だ?                                                                                                                                                                                人権や自由や民主主義を「人類の多年にわたる自由獲得の努力」(日本国憲法97条)によって築いて来たはずの、近現代ヨーロッパにして陥った、20世紀の暗部への人類共通の教訓を何と心得る? ブラック・ジョークだなどと語れようか。                                                                                                          8月2日朝日朝刊には『自分を恥じている、許して下さい。と謝るべきだ』(日本大学佐藤綾子教授)とあった。

参照:                                                                                                        http://www.geocities.jp/torikai007/war/1943/race.html                                                                                         http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%81%E5%85%9A%E3%81%AE%E6%A8%A9%E5%8A%9B%E6%8E%8C%E6%8F%A1                                                                                                                                 http://ja.wikipedia.org/wiki/1932%E5%B9%B4%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8%E6%8C%99

 

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