つぶやき: 子育ての 「私」性と「公」性

虐待に遭遇して。  街・子育て・生活・仕事・・・八方窮した母、 学校に馴染めぬ二年生。  

若い母親(多分30代半ば)による児童(小学校低学年)虐待というか、連続して行なわれる幼児への暴力を目撃することになった。

事務所横にある駐車場の前の四辻交差点を、通学児童が8時15分前に毎朝集団で横切るのは知っていた。                                                     5月下旬、たまたま進行中の仕事現場のビル側都合で、昼前に変則現場入りで、駅に向かう時間帯と通学時間が重なることになった。背中に集団登校の話し声などを聞きながら、駅へ向かうこととなった。                                                                                                                                   現場へはもう少し遅く出ても間に合うことが分かり、翌日はゆっくり出かけた。集団登校から遅れること10分、泣き叫ぶ男の子の声を聞いた。泣き方が尋常ではなく、女性の怒声が響き渡っている。気にはなるのだが、後ろ髪引かれる想いで背に声だけを聞かされ駅に向かい、その母子の姿を視ることは出来なかった。

さらにその翌日、又しても同じ泣き声と怒声、ドンやパチンというような殴打らしき音や鞄か何か持ち物が散乱する音などが聞こえた。その日は現場に遅刻を覚悟で、駅への歩を止め、声と音のする交差点方向へ戻り始めた。やや歩くと20Mほど先に母親と男の子を見つけた。母親が逆上している。殴る蹴るに及んでいる。「早く行けぇ~」「グズグズしてるからみんなに遅れるんだよぉ」。男の子は民家の外壁に当たり、肘から少し血を流している。顔が腫れているように見えた。母親の横には妹だろうか男の子より幼い女児が立ち尽くして居る。また、男の子の頬に母親のビンタが飛んだ。男の子はもう泣き叫ぶしか出来ない。妹はどう対応すればいいのか分からないまま、「お兄ちゃん可哀そう・・・」という言葉を噛み殺して口を横一文字に閉じて、堪えている表情。                                                                                       ワシが制止しよう、声をかけよう、いや難しいな~かえって逆効果か?他人が子の側に立つことで子への怒りが倍化しまいか?と躊躇しながら母子に向かおうとすると、近くを通りかかった年配の通勤女性が何か語りながら母子の間に入って行く。                                                                                                                                                                      「お前が同情を引こうとオーバーな動きすっから、云々・・・」案の定、他人の制止が子へのさらなる怒りを呼んでいる。通勤女性は見るに見かねて意を決しての行動だから下がらない。                                                                                                                               「お母さん、昨日も一昨日もじゃないですか、そんなに一方的に・・・」と言ったきり涙ぐんでいる。                                                                                                                                                 遅れて加わったワシは「オカアはん、ちょっと待ちなさい!ともかくそこまで殴ることないやろ。一体何やねん?何でやねん?どないしたいねん?」                                                                                                       「家事も、仕事も、妹の保育所も、何もかもこいつにムチャクチャにされてんだから。あんた、口出すんならこの子の学校嫌いと付き合ってみなよ。何もできなくなるからさ!」

母親の興奮状態は変わらなかったが、四辻近くの数軒の母親やお婆さんが出て来て母親を囲んだ。顔見知りらしき人が、男の子の肩に手をやり学校方向へ歩き始めた。母親は妹と別方向へ歩き始めた。                                                                                                            ご近所さんから大体の話を聞いた。                                                                                                                               母子は、昨秋転居して来た。兄は二年生、妹は保育所の上から二番目の組。兄は新しい学校(この区の小中一貫公立校だ)にまだ慣れず毎朝グズグズして集団登校に間に合わず、毎日のようにこの四辻でグズって大事になるらしい。小学校へはこの四辻別れ道で右折れし、保育所へは直進。兄の言い分は、あと70Mほどの保育所まで母親といっしょに妹を送りたい、それからちゃんと小学校へ向かうよ。だから、この四辻で独りにしないでくれ!                                                                                                    母親は、保育所へ向かい、またこの四辻まで引き返して・・・ということなど、兄ちゃんにも自分の仕事にも、時間的に精神的に出来っこない。さっさとここで学校へ向かえよ!となる。                                                                                                                                     学校に行きたくない兄ちゃんを、ならばしばらくこのように対処して・・・などとする代案など思い浮かばない。代案があったとして、母親にはそれへの準備、その運営の手間暇、その余裕が無い。今日も、仕事の時間が迫っていて落ち着かない。あゝ、負の連鎖だ。

大都会で、しかも転居して来て半年、まだリズムを確立できないこの母子は、他の母子がそうであるように、自分たちの力でこの難局を乗り切るしかないのか。「公」が何か手伝えるだろうか。小中一貫制、私学に勝つ? 教師偏差値の底上げ? 児童の学力アップ?                                                                                   おい、品川区、品川区よ「オレの話を聴け!」

あえて言うが、                                                                                                                    孤独で、行政が持つ「手伝う」方法と力に不案内で、己の力量と課題の不釣合いに圧し潰れそうな窮状が「兄ちゃんへの暴力」となってしまうこの母子に、                                                                                                    母親が手伝ってくれと言うまで手伝わないのではなく、何か手伝いましょうか?何を手伝えば助かりますか?と、                                                                                              行政の側から声をかけなアカンのとちゃうんか!

 あれこれ想像した。                                                                                                           母子家庭か? 兄妹の父親は同じなんか?                                                                                                              父親はいるのか? いるならどうしてるんや? 妹はその父親の子で、兄は前夫の子か?                                                                                                                                                       複雑な事情が絡んでいるなら、オカアはん、この子死んでしまうで。あんた、この子を殺してしまうで。ワシは大阪から単身赴任で来てるねん。孫もおる歳や。よそ者やから、近所にアレコレ言う付き合いもない。現場の都合で、この出来事に遭う機会もたぶんこの先はあまりない。そやから、安心してブチ撒けなさい。聞きまっせ。

仕事・育児・家事あんたも大変やろけど、この子も大変なんや。学校に馴染めず、多分クラス・メイトや担任にもなつけず、オカアはんあんたよりシンドイかも分からんぜ。学校・クラス・友達との回路を開けない・築けないこの子の拠り所、最後まで味方に立ってくれるのは、オカアはん、あんたやろ。子にとって母親は最後のセイフティネットやぞ!  独りで無理なら、勤務先・区・都・国・ご近所、誰の力を借りてもええんやで。

 その日、8時まで予定の現場の管理・あと仕舞いを大工の棟梁にお願いして2時半に早退した。                                                                                                     昼までにこの区の「子育て支援児童家庭相談」「子ども未来事業」「家庭あんしん」などの部署名称を掴み、緊急電話した。臨場感の下で話したいと、四辻まで来て欲しいと要望し、4時に我が事務所兼社宅へ来てもらった。

あれから約二ヶ月。                                                                                                                     ようやく、当ブログに書く気になる展開とはなった。「公」務員の誠実と矜持に出会えた。若い母親の宣言も聞かせてもらった。                                                                                          詳細は次回。

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