たそがれ映画談義: 品川宿から『幕末太陽傳』再公開のお知らせ
『幕末太陽傳』-時代は地続きだァ-
50年以上前:1957年、日活再建10周年作品として当時のオールスター・キャストを動員して世に出された『幕末太陽傳』が、近く日活創設100周年記念として、デジタル修復して再公開される。映画の舞台品川に居残り「品川宿:品川自由塾」塾頭を名乗り、ブログ・タイトルを『たそがれの品川宿』としてしまっているぼくとしては感慨深いところだ。 出演:フランキー堺、南田洋子、左幸子、石原裕次郎、岡田真澄、芦川いづみ、小沢昭一、小林旭、山岡久乃、市村俊幸、殿山泰司、金子信雄、他
古典落語「居残り佐平次」「品川心中」「三枚起精」「お初徳兵衛」他から取材し、幕末品川という混沌の時代を背景に描くこの映画の世界は、「評論家」で居たのでは『乱世』の現実を生きられない者たち「民」の、時代を相対化し同時に時代の当事者でもあるという、その立ち位置と智恵を主人公:佐平次を通して描いていた。それに成功した正に快作と呼ぶに相応しい映画だ。
時代のトップランナー(インテリ・前衛・党幹部?):高杉晋作(石原裕次郎)に佐平次が言い返す舟上場面の台詞は川島の「思想」の核心だろう(ぼくの初観はアレコレ見失いそうな時期だった71年)と想った。 45歳の若さで早逝した川島雄三のこの作品は、2009年キネマ旬報『オールタイム・ベスト映画遺産200日本映画篇』で、第4位に選ばれたそうだ。 ちなみに、ベスト3は、『東京物語』(小津安二郎)、『七人の侍』(黒澤明)、『浮雲』(成瀬巳喜男)だそうだ。 (資料: http://www.kinejun.jp/special/90alltimebest/index.html )
その後、映画界は衰退し日活は大映と「ダイニチ」という配給会社を作り、製作から退いた。今、「日活」は企画会社としてにみ存続しているか知らない。日本映画の黄金期に衰退を見据えて「時代は本来地続き」「盛衰は、社会事情の反映で変転当然」、むしろ「変(わら、えてはなら、えられ)ないもの」を語り・描き・観客と共有することこそ映画の務めだとの川島の言い分を、いま遺影を観て改めて想うのだ。 観てない方、この機会に是非ご覧あれ!
『あんたらは百姓・町人から絞り上げたお上の銭で、 やれ勤皇だ攘夷だと騒いでいるが、 こちとらそうは行かねえんでぃ、 首が飛んでも動いてみせまさぁ!』