ほろ酔い通信: 爺の軽転落、若い女性の言葉ハンカチ
弁慶の・・・
二週間前のことだ。 年齢なのか元々の反射神経愚鈍なのか、現場で軽転落した。 大したことはないのだが、その原因や落ちっぷりに少々(いや大いに)落胆している。事態はこういうことだった。 某現場で99パーセント仕上がり、あとは備品を並べるだけになっていた。引渡し直前で、クリーニングを終えた床などを汚すまいと、 当然「土足禁止」。ソックス又はスリッパや上履で行動している。 壁面に設置した絵画の額が傾いていて、それを直そうとした。脚立に乗ればいいものを、たまたま電気屋さんが使っていたので、 デスクにブルーシートをかけ、その上に乗ることにした。イスからテーブルに移動した(つもりだった)。 ところが、「ソックス状態」で滑りやすく、しかも移動時の目線は、遠近両用メガネの近視レンズ・遠視レンズを遊泳して混乱している上に、
真下のイス・テーブルの境目を見る際には、裸眼でレンズの下方の隙間を視ることになる。
目測が微妙に違ってた、そこへ「ソックス」。テーブルに足をかけた瞬間、滑ってしまった。 踏み外した足は、ガックン・ガックンと向う脛を二度強打する始末。
そりゃ弁慶様でも我慢できないだろう・・・。 脛は、上部と下部にふたつの打撲痕を残し、翌日から大いに腫れてきた。
一週間後でも、まだ腫れは引かず、痛みもあった。
出来事翌日だけは歩行困難休んだが、現場事情でそうも行かず現場に詰めた。 「現場引退勧告」を受けているのだろうか?*************************************************************************************************************
そんな折に、友人の縁者K繭子なる若い女性の「短い言葉とイラストを、ハンカチに織り込んだ作品」の個展に出かけた。 高円寺にある「アール座読書館」という、ドリンク一杯で静かに読書できるいい空間だ。
繭子さんのコーナーに座り、ハンカチを手に取る。ハンカチの言葉には短く語る副読本なるものが別途添えられている。 席の小さなモニター画面にはPhotoスライド・ショウという趣向。 副読本を読み、スライド・ショウに見入って居た。 ・・・短い濃い言葉が沁みて来る。
不覚にも、人目もはばからず、席で****・・。
人が生きて行く数々の場面で、出遭うべきそして持続すべき、
一番大切なことと、それを抱いて行く気概と宣言。
ハンカチ刺繍というカタチに表現した痛々しくも瑞々しい感性に打たれたことだった。
出会いと別れ、没入と破綻と回生と・・・。 「手ばなす」「ぜんぶ」などなど。
副読本にはこうあった。「ぜんぶ」:「ぜんぶ持ってく。ぜんぶ捨てない。」
それを覚悟し・行ない・持続する者だけが、「手ばなす」ことも出来るのだ、
と教えられて、「引退勧告」を受容れるのなら「ぜんぶ」との距離と関係を考えよう・・・と思ったことだった。