歌「100語」検索。 ①<河・川>
川・河
Kと呑んだ夜、隣の席の男が、カラオケでたまたまその歌を歌い始めて、 『深夜放送から流れるこの歌の歌詞に、ある川の名があったんや』とKの話は始まった。 『それは何度か聴いていた歌だったが、広く知られるようになって日も浅く、俺は川の名前までは知らなかった。その時、彼女はその場の危機をかわすように、「あっ、○○(街の名)だ」と言ってラジオに耳を傾けた。その10数年前、彼女が住んでいた街の名を口にしたんや。会話は途切れ、俺の動きが制された。 女生徒だった彼女の日々を想像して、俺はふと我に返った。 翌朝、俺は大雨の中を猛スピードで帰宅したのだが、約束の時間を20分も過ぎていて、妻と二人の子はもう保育所へ出かけてしまっていた。 その大雨の中、保育所へ急ぐ途中に横転して子二人と共にずぶ濡れになったと妻から聞かされた。やがて放り出された。別れた女房は同じ職場に働き続け、子二人はとっくに独立して、もう孫もいるよ。』 『この歌を聴くと、今も、その街の名・その川が流れる街の女生徒だった時期の想像の彼女・大雨・ギリギリまで待っていただろう妻・ずぶ濡れた妻と二人の子の姿が浮かぶんや。大事故にならなかったのは何よりだが、この歌、どうもいけません』 とKは苦笑した。30年は永いのか短いのか・・・。
ぼくと同い歳のK。永い独り暮らしの不自由に、何故か次々相手を見つけ、「楽しんでるよ」と言い続けた虚勢にも、ようやく陰りが見える。 永い付き合いで、その日初めてこの話を聞かされたということが、何よりもそれを雄弁に物語っている。 主観的には、別れた妻とも、二人の子とも、その川が流れる街の元女生徒だった去ってしまった彼女とも、「切れて」「繋がる」「生」を生きたいと生きたKの30年だったのだろうとは思うが、相手からはとうに切られているのだ。 Kの方では身勝手にも流れることなく、なお澱んで留まっているとでも言うのか? 全ては、川のように流れ行くばかりではないと言うのか?
『河は呼んでる』 http://www.youtube.com/watch?v=h0qg8-Sp3X8 (同名フランス映画主題歌) 『イムジン河』 http://www.youtube.com/watch?v=GOFFjpyVmvI キム・ヨンジャ 『川は流れる』 http://www.youtube.com/watch?v=D6xqNUHpW34&feature=related 仲曽根美樹 『北上夜曲』 http://www.youtube.com/watch?v=cpOunPFAMsk マヒナスターズ 『船頭小唄』 http://www.youtube.com/watch?v=CVwG3MAS8CE 森繁久弥 『神田川』 http://www.youtube.com/watch?v=jNxm4euZ52o かぐや姫 『千曲川』 http://www.youtube.com/watch?v=j8G1lhBOxBM 五木ひろし 『青葉城恋歌』 http://www.youtube.com/watch?v=69cGLlcfH3U&feature=related 佐藤宗幸 『雪国の町』 http://www.youtube.com/watch?v=AnGy9PZIoII 石原裕次郎 『川の流れのように』 http://www.youtube.com/watch?v=3wmIrAFKLs0 美空ひばり 『織江の歌』 http://www.youtube.com/watch?v=lsNTZ3SWqdc 山崎ハコ 『黒の舟唄』 http://www.youtube.com/watch?v=DXhdgOI_tXk 野坂昭如 『すべての人の心に花を』 http://www.youtube.com/watch?v=FPGMsifqRgg&feature=relate おおたか静流
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」方丈記