たそがれ映画談義: 教えてくれた 夫婦の絆・意味・価値
『ぐるりのこと』 08年。監督:橋口亮輔、出演:リリー・フランキー、木村多江
待望していて身籠った子の死から、こころのバランスを崩しやがてこころを病んで行く妻、
その妻を何とか支えようとする夫。妻が再生への入口に立つまでの日々を描き、 夫婦ということの絆の意味を見せてくれた。 作者は言っているのだ、夫婦は究極の同志・戦友でもある、と。
靴修理の仕事から「法廷画家」に転職した夫は、
最近の、凶悪・悲惨・冷酷犯罪の裁判と関係者を目の当たりにする。
作者は、人や社会との関係も成立し難い病に沈んで行く妻を支えようとする夫の、
こころを広げ浄化し高めて行ったものが、逆に「法廷」で知る眼を覆いたい事実だったことを通して、
ある「可能性」を示したかったのだ。
事件の悲惨、被害者の無念や打ち砕かれた未来・希望、加害者のこころの闇、・・・・ その「公的」意味を自己の内に刻み蓄積できた者だけが持ち得る、ある「可能性」を・・・。
私的ラブ・ストーリーであり、公的社会性を抱えた物語だ。
繊細な描写、丁寧な映画作りに感心しました。
リリー・フランキー演ずる夫。「ええ男」とはこういう人のことだと思う。